都内進学塾を20年経営してきて起こった様々な人間模様
                 
                 クロピーの「言ってる意味わかります?!」
クロピーこと、私黒沢正樹が日々思う色々なことをここでは好き勝手に語ってみよう!というコーナーです。詩人モードに突入すると、次から次へと言葉が溢れてくるのです。その言葉を忘れないように書き留めておきたい!というクロピーの想いを聞いてやって下さい!

  


  
★Vol.18 「ある少女」

手と足の短い少女との出会い
 その少女に初めて出会ったのは、確か私が塾を始めた最初の年の10月頃のことだったと思います。母親に付き添われて、「この時期からでも入塾できますか。」と不安そうに職員室に入ってきたのです。

 「塾に通うのは初めてですか?」と私が尋ねると、「いいえ。中2までは他の塾に通っていたんですけど、いろいろあって結局やめてしまいました。」と不安そうな顔で答えてくれました。その時私は、「え、中3・・・?」と少し驚いたのです。

 というのはその少女は、身長が1メートル位しかなく、初め「小学生かな。」と思ったからです。後で、その母親から生まれつき手と足が短いため、回りの子達にひやかされ、授業中に何も言えなくなってしまったという事を聞かされました。「わからない」という言葉が出せなくなり、成績も中3になるにつれてどんどん下がってしまったということでした。

少女との受験に向けての戦いの日々
 手と足が短いということ以外は他の女の子と全然変わらないのですが、私達は中3のこの時期からということもあって、入塾させることを少しためらいました。「今から、一体、何ができるだろう・・・・?」

 しかし、結局一晩考えて、次の日、私達にできる全力を尽くすことに決めたのです。その日から、戦争のような補習が始まり、母親が夜中の12時ごろに迎えにくる日々が続きました。その辛そうな姿に、そして、その宿題の量に何度、母親の方がくじけそうになったかしれません。

都立高校は内申で、私立高校までも絶望的・・・
 しかし、その少女は、必死にがんばりました。そして、12月の進路決定の時を迎えたのです。通知表の点は、そんな急に上がるものでなく、また体育の「1」も重なって、内申重視の都立高校は、ほぼ絶望という現実に直面しました。

 また、私立高校は、学校の先生の話では勉強以外の問題で無理だということで、この時点で、この少女は受験しても合格する可能性のある高校をすべて失うことになってしまったのです。

「あんなにがんばったのに・・・・・・。」
私と母親の前で大粒の涙を流しながら、
「みんなと同じように高校へ行きたい・・・・。」

 この時、私は完全に言葉を失っていました。そして、自分には、もうこれ以上何もしてあげられないという、なんとも言えないやりきれなさでいっぱいでした。

わずかな望みをかけた最後の賭け!結果は・・・?
 それから数日後、その子の願いが天に通じたのか、ある私立高校で、合格点を取れたら、入学することができるという話が持ち上がりました。これは、一般的に言えばごく当たり前のことなのですが、この当たり前のことが、その時の私達にとって、その少女にとって、どんなに嬉かったことかしれません。

 そして、合格発表の日を迎え、私達は職員室の電話の前に釘付けになっていました。「リーン」と電話が鳴るたびに「はっ」としながら、生徒達の喜びの声を待ったのです。そして、その少女からも、電話がかかってきました。

「・・・・・・・」
「先生・・・・・」
もうそれ以上、涙で言葉にならなかったのでしょう。
                             

「高校へ行って勉強がしたい」という純粋な気持ち
 ただ、私達にも、電話口でお母さんと泣きながら飛び上がっている姿が目に見えるようでした。その子にとっては、この高校は自分で選んだ学校では決してないのですが、自分を受け入れてくれるという、そして、その高校に合格できたという喜びは、他の受験生には、誰にも理解できないものなのかもしれません。

 ただ、合格という結果だけにとらわれ過ぎる現在の中で、こんな受験があったということを、そして、最後まで「高校へ行って、勉強したい。」と心から願っていた、そんな生徒がいたことを、これからも私達は決して忘れることはないでしょう。
                              


 

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